本気でうまくなってほしい先生のために、生徒からクレームを受けないためのアドバイス

<子ども編>

子どもと良い関係性を築くには、まず【楽器以外】から!

「子どもたちに演奏を上手になってほしい」という想いが強い、熱い先生ほど、生徒への言葉が強くなってしまうことや、感情的に怒ってしまうことがあると思います。

確かに、「優しく接する」だけでは、生徒は絶対に伸びません。ただ、「強く注意」をすることでは生徒本人が傷つき、クレームに繋がってしまうことがあります。

まず必要なのは、「優しく注意」をしても、生徒が講師の指摘を聞くように、楽器演奏以外の面での関係性をきちんと築くことです。

例えば・・・

 

・レッスンの最初と最後のご挨拶

「こんにちは」「ありがとうございました」を言うことはもちろん、講師の顔を見て挨拶を言えない生徒には、「ご挨拶はお顔を見て言うんだよ」と優しく指摘しましょう。

受付の前を素通りする生徒には、「受付のお姉さんにもご挨拶するんだよ」など…

 

・待合で騒いでいる生徒がいたら

「ここは静かに待つ場所だよ」「○○くんの声、違うお部屋にまで聞こえていたから、静かに待っていてね」

 

・生徒が遅刻をしてきてしまったとき

「ちょっと時間が過ぎているよ、どうしたの?」「こういう時は何て言うのかな?」

 

・生徒が忘れ物をしてきてしまったとき

「忘れ物してしまった時は何ていうのかな?」「今日は先生の楽譜を貸せるけど、無いときもあるよ。次に忘れちゃったらどうする?」

→取りに帰る、ママに持ってきてもらうなど、約束をしましょう。

 

・お返事が「うん」の生徒には

「ハイ、って言おうね」

 

・生徒がお茶を飲みたいと言ったら

必ずレッスン室の外に出してから飲ませる

などなど…

こういった些細なところのお約束を守るところから、「先生の言うことは聞かないといけない」という関係性にしておかないと、「練習してきなさい」「ここを直しなさい」といった楽器関連の言うことはまず聞いてくれません。

頭ごなしに注意をするのは簡単ですが、それで生徒が辞めてしまっては本末転倒です。今の子どもたちは、叱られ慣れていない子も多いです。「優しく注意」をしても、上達するように、楽器以外のところから導きましょう。

 

注意するときは論理的に

練習や演奏に対して、感情的に怒っても良いことは一つもありません。子どもは委縮し、講師は疲れます。

実際の例を紹介します。

全く弾けていないところがある時

~男の子~

「先生、言いたいところがあるんだけどどこだと思う?」

A1 「ここ?」

先生「先生もそこが惜しいって思ったよ。ママが来るまで、今日はここの左手を何回も練習してやっつけちゃおう!」

 

~女の子~

「先生、言いたいところがあるんだけどどこだと思う?」

A2「わかんない」

先生「じゃあ先生動画撮るから、もう1回弾いてみて」

撮った動画を一緒に見て生徒に指摘させて、

先生「何回くらい練習したら、ここ弾けるようになると思う?

A2「10回?」

先生「じゃあ、一緒に左手10回やってみようか!」

 

お迎えに来た親御さんへ、必ずフォローしましょう。

「ここが全然出来ていませんでした」と言うと、親は子どもを否定された気持ちになります。

先ほどの男の子の場合「今日は一緒に、ここの難しい左手と戦いました」

女の子の場合「今日は○○ちゃんが、ここが出来てないって気付いてくれたところを、10回も一緒に練習しました」

など、なるべく否定する言葉を使わずにお伝えしましょう。

【注意】

先生が「戦う」って言葉を使うなんて!!と思う親御さんもいるかもしれません。普段の親御さんの様子や言葉遣い、LINEから見極めて、使い分けましょう。

 

親御さんとのコミュニケーションも大切に!

生徒の学年が上がり、送り迎えにいらっしゃらない親御様との連絡が、「レッスン日時の相談」をするだけになっていませんか?

レッスンの様子や練習してほしいことを伝えることは、とても重要です。

講師と親御様の結びつきが弱いと、子どもが辞めるのがより簡単になってしまいます。

 

レッスンノートを使い、

・講師からはレッスン時にコメントを書く

・生徒は練習した曜日の絵を塗る

・親御さんからもコメントを書いてもらう

という、いわゆる「交換ノート」のような形式もおすすめです。

 

また、忘れ物、遅刻があった場合も、きちんと親御さんにも連絡しましょう。

生徒本人に、ちゃんと「親」と「先生」が繋がっていると認識させることも、継続の上で大切です。

 

ネガティブな連絡も、なるべくポジティブに言い換えましょう。

(例)

NG→今日、○○ちゃんが楽譜を忘れてきていたので、今後気をつけるよう、お伝えください。

OK→今日、○○ちゃんが楽譜を忘れてしまったので、私の楽譜でレッスンをしました!貸せない時もあるよとお話したところ、次から気を付けるとお約束してくれました。

 

練習不足の生徒への対応

★未就学児~小学校低学年の場合★

練習不足を全く指摘しないのはNGです。練習をしないと上達はせず、上達しないピアノならやめさせよう、と繋がります。

 

・「どうして練習できなかったのかな?」→体調が悪く幼稚園や学校を休んでいたりする可能性もあるので、一応聞きましょう。

 

・未就学の生徒には、怒るよりも、先生が「悲しむ」方が効果的です。

「先生、今日は出来るようになってるかなって楽しみにしていたのに」

「先生、○○ちゃんを怒りたくないんだけど、こんなに練習ができてないと言わないといけないよ」

などと、静かに注意しましょう。

 

!!!かなりしっかり注意をした場合は、即、「親御さんにフォロー」をしましょう!!!

・親御さんがお迎えにいらした場合

「ちょっと今日は、冷戦が起こりました…」「今日はかなり盛り上がってしまいました…」などと言い換えをし、シリアスになりすぎないように伝えましょう。

「ここの練習が足りなくて、先生に怒られちゃったんだよね?」と、子どもに振るのも効果的です。

そして、もし注意することしかなくても、良いところを挙げるのを忘れずに!

「イライラせずに、何度も反復練習が出来るようになりました」

「めげずに頑張りました」

「すごく集中したよね?」

「この30分でかなりスムーズになってきました」

そんな些細な事でも構いません。「注意だけをして帰す」ことは極力控えましょう。

 

・レッスンを見ていない親御さんの場合

もし生徒が「先生に怒られた…」と泣きながら帰ってきた場合、親はかなりの確率で講師に不信感を覚えます。少しでもレッスンで生徒に言い過ぎたなと思ったら、その日のうちに親御さんにご連絡をしましょう。

例:「今日、レッスンでお互い熱くなってしまい、私も細かく言い過ぎたかもしれません。○○ちゃんの様子は大丈夫ですか?良かったら、少し××の曲の練習をみてあげてください」

多くの親は、「怒られるような練習しかしてないあなた(ご自身の子ども)が悪いんでしょ!」とはなりません。私たち、音楽大学卒業生の親の価値観とは大きく違うことを理解し、接しましょう。

 

!!!かなりしっかり注意をした場合は、翌週「生徒をフォロー」しましょう!!!

生徒は1週間、「先週、先生に怒られた…」という気持ちを引きずっています。次の週の接し方により、今後の明暗が分かれます。

少しでも良くなっていれば、「先生が言ったことを受け止めて練習してきてくれて嬉しい」「先生も言い過ぎたかなって思ってたんだけど頑張ったんだね!」と、しっかり伝えましょう。それを親御様にもお伝えして差し上げると、更に良いかと思います。

少しも良くなっていなければ、それは講師の怒り損です。言い方を変えましょう。

 

★小学校中学年以上の場合★

発表会やコンクールなどの本番がなければ、基本的には練習不足を指摘することはやめましょう!その方が、講師・生徒共にお互いの精神が安定します。

まず、港区の小学生は、「半分が私立中学に進学」ということを念頭においてください。即ち、「中学受験」があります。

港区高輪や港区南麻布の公立小学校では、中学受験率が80%近いというデータもあります。

都内の中学受験戦争は大変過酷で、塾と模試、塾と模試…の繰り返しの間に、練習とレッスンを続けるのは、将来の目標が音楽大学でない限り、大変困難です。

「週末の模試の結果で、翌週の塾の席順が決まる」という塾もあるそうです。

受験戦争で神経をすり減らしている子どもたち、親御様に更に「楽器の練習」というプレッシャーをかける必要はないと思います。私は、少しでもレッスンの時間が気分転換となり、言葉通り音を楽しむ時間になればと考えて接しています。

生徒と親御様には、「お家で全く練習が出来なくても、教室で週に1回でもピアノに触れる、楽譜を目にする習慣さえあれば、中学入学後にも趣味・教養としてピアノを楽しく続けることができます。」と、前向きに伝えましょう。

そして、お家で全く練習できない生徒にはレッスンで使用する教材を極力簡単にし、レッスン内だけでも2~3カ月で何とか形になる曲を選びましょう。初見の練習、譜読ドリル、楽典、聴音などもうまく使いましょう。

親から退会の相談があったら・・・

中学受験に伴い、「小4の壁」があるように思います。

小学校4年生になると、「塾が忙しい」「勉強が大変」「練習する時間がない」といった理由で休会・退会する生徒様が大変多くいらっしゃいます。

先生の収入に影響することはもちろんですが、入門を乗り越えてやっとこれから難しい曲が弾けるようになる…!というタイミングでレッスンを辞めてしまい、受験が終わるまで2~3年のブランクが空くと、なかなか譜読みや演奏の感覚は取り戻せません。

「忙しくなってきたので休会します」という連絡が先生にあった場合、上記をよく生徒本人や親御さんに丁寧にお伝えし、出来る限り受験の間際までレッスンをご継続頂く方法もあるということを示してみましょう。

実際の「退会引き止め」例を紹介します
親御様:急にすみません!
最近、塾が忙しくなかなかピアノの練習が出来ず、、()
大変申し訳ないのですが、退会の手続きをお願い致します
講師:そうなのですね💦
塾がそこまで忙しいとは知らず、しっかり練習するようにと言う言葉が負担でしたでしょうか。。

上達はゆっくりになってしまうかもしれませんが、週に1回、
お教室だけで練習するという形でお互いが割り切れれば、
そのように継続していらっしゃる方も多く居らっしゃいますが、
退会という形でよろしいでしょうか?

親御様:それでは、なかなか練習出来ないとは思いますが、
レッスンは続けてみます。
すみません!先生のお言葉が負担なのではなく、
中学受験に向けて勉強が忙しくなってきただけです
よろしくお願いしますー!

ご褒美はよく考えて!

生徒にとって一番のモチベーションが、先生に合格をもらうこと、合格したら親御様が喜んでくださること、にするよう努めましょう。これらは不動ですが、シールや飴で釣ることは、長続きしません。

なぜなら、最初は手っ取り早いですが、シールも飴も、欲しくなくなる時期があっという間にくるからです。

また、「1曲合格したら、先生が好きな曲を1曲弾いてあげる」という方法も、シールや飴で釣るよりはずっと文化的で良いかと思います。

 

それでも言いたくなる時…

【言い換え】をうまく使って注意しましょう。

・頭悪いんじゃないの?→せっかくの良い頭を、よーく使って!

・何回言ったら分かるの?→ここ、先生に注意されるの何回目かな?

・先週も同じこと言ったよね?→先生、先週何て言ってたっけ?

・お母さんに言うよ!→次に出来ていなかったら、レッスンにママご招待だな~

・そんなんじゃ上手にならないよ!→もっと上手になってほしくて言ってるんだよ。

・(親御さんへ)練習があまり出来ていなかったです→ここの練習が足りなくて、自信を持って弾けないみたいです。

感情的に言う前に、言葉の選択をしましょう!

 

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